発展する音楽文化

発展する音楽文化

イギリスへの進出、そして発展へ

プレスリーの登場によって人々の音楽は様々な変化をきたすこととなる。実際にプレスリーはイギリスへとロックという新たな音楽を持ち込み、それまでクラシックを始めとした伝統ある音楽だけしか知らなかったヨーロッパの人々にしてみれば、恐ろしいまでの衝撃を与えた事は言うまでもない。しかし音楽として受け入れてもらえるまではかなりの時間が掛かったといえる、また受け入れられてもかなりアウトローな人々を対象だったのが目に浮かぶ。特にクラシックに携わる人々からすれば邪道で野蛮なアメリカ音楽であると、そんな蔑みにも似たよう感情を向けられていたといえるだろう。

そうした中で登場したのが『ビートルズ』だ。彼らの登場によってロックという音楽が世界的に受け入れられていくようになるわけだが、この頃は新たな時代の夜明けを伝えるように、アメリカなどでも大きな動きを見せていく。

1960年代のアメリカ状況

1960年代のアメリカで最も有名な話題といえば個人的には、やはり『キング牧師』の演説だろうと印象に残っている。たまたま授業で彼のスピーチをクラスで交代しながら読み上げるという授業をしたこともあって、この時に内容に関してはとても感慨深いものだ。彼のこの発言を発端としてそれまで徹底的に迫害され続けていた黒人達は、同じ黒人でありながら白人達に力強く、逞しく、そして心に訴えかけるようにスピーチを告げていくのだった。

キング牧師によってようやく白人と黒人という人種間の問題は徐々に収束の気配を見せていたものの、アメリカが世界に対して行ってた横柄な行いはあらゆる弊害をもたらしていく。国内での混乱はもちろんだが、ベトナム戦争へと本格的に参入するなど、世界大戦という大きな戦いの後に続くように巻き起こったベトナム戦争への参戦は、多くの若者達に対して反戦感情を煽ることとなる。

戦争などという愚かな行為をするべきではない、まるでそう叫ぶように若者たちがロックミュージックへとその意識を系統して行くこととなる。この頃になるとR&Bなどが主流だった音楽は徐々にマイナー文化へと廃れていき、ロックこそ若者たちにとって愛されるべき音楽であるとして利用されるようになっていった。

音楽性として

そんな時代だったこともあって、ロックに用いられる楽曲の特徴として見られたのが黒人差別と反戦運動という2つに絞られている。またあらゆるロック歌手の登場によって更なるカリスマ性を以ってして確立させていったのが『プロテスト・ソング』というジャンルだ。日本でもこのジャンルを扱っていた歌手も多く存在しているが、メディアという面ではあまりにも政治色を強く表しているため、放送内容に関しては自粛というメスが加えられることが多くある。

ただその時代においてとりわけ注力してでも、国が行おうとしている非道行為を止めるため、人々の感情を駆り立てる手段としてはこれほど優れたものは無いだろう。取扱う内容も先ほど紹介した人種差別や反戦運動のほか、同性愛差別に貧困、または独裁政治に対しての抗議といったもので多く利用されている。

ロックの本質たる『反逆』というのがここでようやく理解出来る、またそんなロックで大成することを悪、もしくは間違った結果だとする見方があるのも頷けるかもしれない。元は自分も反逆する側だったはずなのに、成功という名の庇護を受けることで、いつの間にか立場が反逆していた側へと引きずりこまれてしまったと、そんな思いに苛まれたのだろう。だからこそ自分は死ななければならない、そんな意図があったのも理解出来てしまう。


侵略とロック文化の変容

それを象徴する出来事としては決定的なほどに、商業価値があると見出される瞬間を提示してしまったことだ。コレまで多くの人々に反社会的メッセージを送るため、活動してきたロック歌手達の活躍、によって文化こそ広まっていったが、ただロックミュージックが芸術として認知され始めたことから歯車は狂い始めた。

そのまさにコレは商業価値として利用することが出来ると企業に思わせる出来事が、1969年に開催された『ウッドストック』という、愛と平和と自由をテーマにしたありふれたイベントだった。このロックフェスは三日間の開催で40万人を動員するなど熱狂する結果をもたらしたことで、レコード会社を始めとしたあらゆる業界はロックミュージックへの侵略を開始する。

それによってコレまで反社会的思想を示すために利用されていたはずのロックは、文化として、芸術として、そして大衆娯楽として利用されてしまうのだった。歌手達も開催されるイベントに出演してギャラを貰うなどしていたため、観客達からは行っていることとやっていることが違うという反感を起こしてしまい、築かれていたはずのロック文化における歌手と観衆達の関係性は一気に打ち崩されてしまった。この瞬間、ロックミュージックはそれまでの本質とは異なる、誰にでも受け入れられる文化へと変質してしまうのだった。